『物は言いよう』(斎藤美奈子)

物は言いよう


自分の感情の起伏が激しくってくたくたになる本でした。


FC=フェミコードに抵触する各種発言を具体的にあげ、どのように抵触しているか及びその背景に斎藤美奈子がメスを入れる。のですが、つまりは女性としてはあまりありがたくない発言を先に読まなくてはならない=一回ムカツかなくてはならないのだ。そのあと、その発言がどうして問題があるかを紐解いて一言言ってくれることで爽快感はあるものの、なんとも起伏が激しく、それが60もある。雑誌連載でちょこちょこ読むほうが向いてそうですね。


中には「それはちょっと言いがかり気味では」と思う例もなくはないのだけど、とりあえずこの本をみんな一回読んでくれると大分過ごしやすくなるなあとは思う。文中にも出てくるけど、男性だけじゃなくて女性でもFCにひっかかる発言をする人は多いです。引っかかるのかも?という発想だけでいいからしてくれたらと思う。少なくとも各章にあがっている「女の涙には勝てん」「女は家にいろ」「女は女らしく」「男はスケベだ」「女だからこそ」「女に政治はわからん」「女はだまっとれ」に類する発言をしていないかだけでも気にしてもらえるといいなあ。


私は男女差が比較的気にならない職場にいます。不愉快なことが多そうな職場というのはある程度想像がついたから、そういうところを避けるために選択肢を増やす努力はしたけれど、なかには自分がやりたい仕事がそういう環境にしかない人もいて、本当に気の毒だと思う。


自分に向けられるのではなくても、気になる言動は世に溢れている。でも正直多すぎていちいち怒ってられないのです。特に団塊世代のおっさんおばちゃん以上の年齢の方については、もう諦め気味。男が働き女が家庭を守るのが当たり前だった世代の人たちにFCに触れるから改めろというのは、下手すると彼らの生き様を否定していると取られかねないから難しい。そんなパワーはなかなかありません。若いけどおっさんおばちゃんな思想の人を含め、ひそかに「仕方のないお年寄り」扱いしておくぐらいしかない。だから著者の仕事には本当に頭が下がるし、この仕事をしなくて済んだら他の面白い本ができるのにもったいないとも思う。


ところで付録の「ご主人と奥さん」問題はとても実用的。そうそう「奥さん」はもう語源は忘れて固有名詞と思ったほうが楽だよねえ。前述の通り極端なところもあるけど、こういうところをみると斎藤美奈子はやはりバランス感覚が優れている…というより私のバランスが似ていると思う。