『実験小説 ぬ(浅暮三文)』

実験小説 ぬ

道路標識に描かれた男を主人公にした「帽子の男」に始まり、さまざまな表現の実験が繰り広げられている短編集&掌編集。
ただ、表現がいろいろなようで、実は類似した話が多いのが興味深い。

現実と幻想の境、あるいは生と死の境を描いた作品が目立つ。小説という形態から少しはみ出す実験であることがその傾向を生むのだろうか。その情景に霧が多いのも、境の曖昧さを象徴するものなのか。その中央にあるのが「遠い」なのかも。

のわりに、自分が気にいった作品を振り返ると、「線によるハムレット」とプラトン荻窪にラーメン食べに行くやつ(「箴言」)だったりして。あ、本の世界に迷い込む話(「カヴス・カヴス」)も面白かった。発想として近い既作品はありそうだけど、このぐらいコンパクトな分量で豊かな物語を納める様はスマートだなあと思う。

あと、加藤静夫が気に入りました。また出てこないかなー。
そういえばあのクイズは全然わからない。