グランプリシリーズ2009フランス大会


いよいよシーズン開幕。特に女子は初戦から既にファイナル候補がずらりと並んで見ごたえがある…はずだったんだけど、まあ、いろいろありましたねえ。
あ、長いですよー。




フィギュアをがっつり観るようになったのとはてなダイアリーを更新しなくなったのがちょうど同じ頃かなー。ということでちょっと前書き。

  • 現在の採点方式には大きな問題があるなとは感じている。

特に回転不足の判定。3回転の回転不足が2回転の失敗として扱われるのはどう考えてもおかしい。スローじゃなきゃわからない程度の回転不足より、あきらかにミスとわかるお手つきの方が得点が上じゃおかしいだろ。

  • 結局主観が入らざるを得ない演技構成点は、誰もが納得できるような点にするのは難しい。ジャッジの環境(どこの国の人かとか)と好みに左右される。

おそらくどの時代もある程度、贔屓される選手や逆に点を下げられる選手がいるのだろう。とは思うものの、最近の傾向はちょっと極端だと思う。

  • とはいえ、IOCとつながりが深いのがどこかとか、誰と誰はつながりがあるとか、特定の国や地域を差別しているとか、根拠がはっきりしない陰謀説は興味なし。
  • 本当はプロトコルを観てああだこうだ考えるのが好きだったんだけど、最近の採点のひどさに滅入ることが多いのでやめています。


で、フランス大会。


個人的には中野友加里の雄姿に泣きそうでした。
SP「オペラ座の怪人」はカーニバルオンアイスで見たときから鳥肌ものでしたが、オープニングのオルゴールから始まる繊細さと、メインテーマの荘厳さを見事に表現していたと思う。衣装も好み。オペラ座って男子選手がやるイメージが強いけど、女性がやると儚さが際立って、違った趣があるねえ。衣装も素敵でした。
ジャパンオープンで負傷した肩が痛々しくて、医者にはフランス杯欠場を勧められたというコンディションの中、シーズンにかける意気込みが伝わってきた。


フリーの「火の鳥」も、ジャパンオープンよりずっとよかった。「火の鳥」をやると聞いた時から、炎のようなドーナツスピンに期待していましたが、スピン以外も迫力ある演技だった。
正直衣装はあんまり好みじゃないんだけど、演技を際立たせる効果をまのあたりにしたので納得。
ステップも、他の誰とも違う中野らしさが出ていたと思う。そして曲への同調がすばらしい。
ジャンプは怪我の影響もあるのか、まだ精彩に欠けたところはあったけど、これで肩が治ってジャンプが決まったらどんな仕上がりになるのか、今から楽しみです。


キムヨナのSP「007」は期待以上の出来だった。事前に「ボンドガールから女版ボンドへ」といった話を聞いていたけど、ここまで演じきるとは思わなかった。「女版ボンド」という発想自体がとても好み。ボンドガールって、とても個性的なポジションではあるけど、結局添え物だと思うので、主役取っちゃうくらいのしたたかな女の方が面白い。
ただ、76点はオーバーだなーと思う。技術的には、3F+3Tが3Lz+3Tになったぐらいでそこまで変わってないのに…
一方フリー。ジャンプが完全に一個抜けた他は大きなミスがなく、クリーンな演技だったけど、こっちは正直あんまり印象に残っていない。うーん、ぶっちゃけいつもどおり…。


浅田真央は…全般的に戦略に疑問ありすぎ。
3Aを1試合で3回やることを前提に考えるなんて無理がありすぎるなあと。SPでなかなか入らなかった3F+3loについては、3loがどうしても回転不足を取られるので回避するのは仕方ないけど、あまりに極端。


SPの仮面舞踏会。3Aがやっぱりダメなのは正直想像どおりだなー。彼女のいつものシーズン序盤、な感じ。
衣装、グリーンにピンクって配色が個人的に苦手なので今ひとつだけど、無理にアダルトな衣装にするよりはいいのかも。
SPで仮面舞踏会だと、あの「鬼」ステップをスタミナ十分なまま見られるのは素晴らしい。昨年のものだけあってこなれているし。ただ、フリーでもあんまり変わらないのが残念。
フリーだけどラフマニノフ「鐘」は、タイプとしては仮面舞踏会の路線というか、同じテーマが繰り返し続く曲。どう持っていくかを完全に演じる側が決めることになる。このこと自体は悪くないと思う。ジャンプもスピンもスパイラルもステップも本来は高いレベルのものを見せられるのだから、あまりストーリー性が強いものとかより演技の緩急を引き立てる方がよい。
それにしても、重っ!ジャパンオープンでは完全に曲に負けていたと思う。
フランス大会では、少し馴染んだ気がする。
もともと、雰囲気は仮面舞踏会を渋くしたような路線なので、あの複雑怪奇なステップは前回のプログラムをほぼ踏襲できる。こういうところは戦略が成功しているんだろうな。
フリーの3Aは1回だけ成功。ただ、いつもどおりでパンクするとダメージが大きい。
やっぱり3Aに引きずられすぎだなあと思う。彼女のメンタル面としても、最初のジャンプが決まるかどうかでそのあとの精彩が変わってくる。もちろん見る側のテンションとしても影響を受けるんだけど。


メディアはまあ、点差やジャンプの失敗から短絡的に、今のところ大差がついていると騒いでいるけど、実力そのものがそこまで差があるとは思わない。
浅田真央は2007年シーズン、3Aが全然入らなくなっていたけど(無理にステップからやろうとしていたのも大きいんだろう)、昨年3Aコンビネーションを始めたら、気がついたら1試合で1回は決まるようになっちゃってる。そしてフリーでの怒涛のステップは誰にも真似できないレベルになっていると思う。
率直に言ってチャレンジ=博打を打ちすぎて好調不調の波が激しすぎるんだよね。
ただ、どうして3Aをコンビネーションにしたり、SPで3Aをやったりするかというと、3F+3loがどうしても回転不足と判定されるからなんだろうなあ。解説者がスローで見て「完璧ですねー」と言ったものでさえ…
たとえ浅田真央が完全にプログラムをこなしても、キムヨナが大きく崩れない限り、上回る点は出ないんじゃないかなと現段階では思ってしまう。
まあ、点数については結構キリがないのでやめとこ。
ただ、浅田真央が本当に神演技をしたとき、採点がどれだけおかしいかがきっと明らかになるんだろうなあ。
キムヨナだって間違いなくすばらしいスケーターだと思うのに、採点が微妙なせいで、彼女がいい成績を出しても手放しで喜べないのが悲しい。


話を戻して浅田真央フリーの話。
「鐘」みたいな重くて暗めの曲は、彼女の表現力の幅を広げるのには良いと思うんだけどね。今年、勝負の歳でしょ?
彼女が一番生き生きしているのって、陰より陽だと思うんだよね。
もちろん、好みと違うプログラムに挑戦することは大事だけど、今年じゃねえだろと。
ソチも目指すかもしれないけど、バンクーバー今年だろと。


個人的には、浅田真央に一番足りないのは「何かに感動してそれを表現する力」のように思っている。それが、スケートオンリーの人生の中、よい芸術作品(小説とかも含めて)に出会う機会が少ない=感動した経験そのものが少ないからなのか、経験を表現につなげる力が弱いのかはわからない。インタビューのボキャブラリーの少なさから、前者かなと失礼ながら思っていたり。
将来的にはわからないけど、現状の彼女は「素直で明るい女の子」なんだと思う(20歳の女性に「女の子」は失礼だけど敢えてこう書く)。
アジエンスのCMで「恋をしたい」「失恋したい」といったすごくシンプルな気持ちを体で表現しているシーンがすごく好きなのだ。
それに比べて競技ではなんだか、お仕着せを強要されているような気がしている。
感動しきれていない重厚な作品を演じるより、彼女が心から好きだと思うことを表現してみてほしいなあ。
フランス大会のエキシビションカプリースは競技よりずっとよかった。
早いパッセージが彼女の特徴にすごくマッチしていたし、何より、表情が「ねえねえ観て!」って言ってるんだよね。


…と思っていたら、カプリースがSPになる案もあるようです!
http://www.sanspo.com/sports/news/091021/spm0910210504001-n2.htm
ぜひ実現してほしいなー。


男子はまた次回…