『あほらし屋の鐘が鳴る(斎藤美奈子)』
文学、雑誌、テレビなどについて斎藤美奈子が斬りまくった雑誌掲載の文章を集めた、とはいえ掲載時は1996年頃、一冊にまとめたのも1999年ともはや前世紀の話。なので若干古臭くなっている話も多いんだけど、それはそれと割り切れば十分楽しめる。
女性誌レビューは、どちらかというとあんまり知らない雑誌の方が興味深い。逆に知っている雑誌は、今とのギャップなのか印象の相違なのか、違和感もあるなあ。アンアンが長女、ノンノが次女とか。ノンノは実に優等生的な雑誌で、どちらかといえば長女的だと思う。一番関心の高いファッションが重きを占め、でも化粧品、カルチャーネタも毎月怠らない。国立大受験な感じです。毎回一応テーマが変わるアンアンは、毎号読むというより、興味のあるときだけ買うことも可能で(一般的にどういう読者が多いかまではしらないけど)、そもそも、ノンノと姉妹ではないのではないかと。とはいえ、こういう発想自体普段あんまりしないので、切り口として面白かった。
何度か話が出てくるのが失楽園(懐かしい?)。ところで
不倫がドラマになりうるためには、強健な家制度や社会的な因襲が、高い壁となって立ちはだかっていなくてはなりません。かつての姦通=不倫が文化でありえたのは、まさにその条件が整っていたからです。
のあたりの話はなるほどなーというか、だから今扱ってもつまらない、あるいは野暮ったくてウザいんだなと思った。
この本、どっちかというと「今月のおすすめ」と題された、斎藤美奈子お薦め本紹介が読みでがあります。彼女が毛嫌いする本に関する文章はたくさん読めますが、彼女が進める本をきちんと読むのはなかなか新鮮(とはいえ大分経ってますが)。
面白そうと思ったものをざっとあげておこう。紹介については安易な要約すると誤解を生みそうなので割愛。
- 春日武彦『心の闇に魔物は棲むか』(大和書房)
- 佐藤哲也『沢蟹まけると意志の力』(新潮社)
- 川上弘美『物語が、始まる』(中央公論社)
- 保坂和志『季節の記憶』(講談社)
- 池田香代子・大島広志・他編著『走るお婆さん』(白水社)
- セシル・サカイ『日本の大衆文学』(朝比奈弘治訳、平凡社)
- 女性文学会編『たとえば純文学はこんなふうにして書く』(同文書院)
- 金井美恵子『軽いめまい』
- 阿部和重『インディヴィジュアル・プロテクション』
- 笙野頼子『パラダイス・フラッツ』(新潮社)
- ガービー・ハウプトマン『「いい男求む 美女35歳」』(永野秀和訳、文芸春秋)
- 藤本由香里『私の居場所はどこにあるの?少女マンガが移す心のかたち』(学陽書房)