『誘拐ラプソディー』(荻原浩)

誘拐ラプソディー

 せっぱつまって自殺しようとしていた伊達秀吉は、家に帰りたくない子供にまとわりつかれたことから誘拐を思いつく。上手く言いくるめたところ非常に協力的な人質で大助かり。しかし、単に金持ちの息子を誘拐したつもりだったのが実はヤクザの息子。一方ヤクザ側も、対立抗争が盛り上がっていて事件は一層混迷へ突き進む。
 主人公の語り口が軽妙で楽しい。決して都会的とはいえないけれどなかなかキャッチーだ。話の筋もわかりやすく、最後にはほどよく泣ける…今にも映像化できそう。
 香港マフィアが絡んできたあたりはもっと盛り上がってもよかったのに、かなりあっさり終わったのは残念。登場人物を極力「根はいい人」にしたがるところが裏目に出ているのかも。なんていいつつ、嫌なやつばっかり出てくる話よりはずっと好きです。
 些細なネタが複線になっていて可愛い。
 この作品書いてから大分経っているので、今はもっと上手くなっているんだろうなあ。最近の作品を読んでみたくなった。