キッチン・ストーリー

(監督:ベント・ハーメル、出演:トーマス・ノールストローム、ヨアキム・カルメイヤー)

公式サイト*1のあらすじより

 1950年代初頭の北欧。ノルウェーの田舎に住む、年老いたひとり暮らしの男の元へ、スウェーデンの「家庭研究所」から調査員がやってくる。
調査員の目的は、“独身男性の台所での行動パターン”を観察するためだ。台所の隅に、男を見下ろす奇妙な監視台が設置される。
調査される男と調査員との間には、「お互い会話してはならない」「いかなる交流ももってはならない」などのルールが決められていた。最初は気を許さないふたりだったが、観察生活が続くうちに、男の生活に少しずつ変化が生まれてゆく・・・。

 監督:ベント・ハーメルは、前に読んだ吉野朔実の映画ガイド『こんな映画が、』で紹介されていて興味があった『卵の番人』という作品の監督。ということは観終わって改めて公式サイトを見たら乗っていたのだった。ちなみに公式サイトの「ストーリー」の項、最後まできっちり書いてあるのでこれから観る人は気をつけたほうがよいです。
 北欧の素朴で優しいイメージそのままの映像は、雪降る風景までも温かみのある不思議な色彩。描かれている話は、とてもブラックでもある、おじいさん・コメディ。
 「独身男性の台所での行動パターン」とその調べ方がそもそも面白い。部屋の隅にすえつけられる監視台は、座ると頭が天井につきそうなほど。別に高いところじゃなくてもいいはずなのに。でも、みんな1度は座ってみたがる気持ちもちょっとわかる。
 この手の作品にはもともとあまり期待していなかったものの、もう少し監視者・被監視者のバトルが派手でもよかったかな。淡々としているのが面白さではあるんだけど、ちょっと中だるみした感がある。
 実際にこういう調査があったことから思い着いたらしいんだけど、実際にはどんな調べ方をしていたんだろう?心理学がそれほど発達していた時代ではないにしろ、監視する人がいたらその行動には影響があるくらいのことはわかるだろうし。
 仲良くなった二人のやりとりは微笑ましく、でもイザックの隣人(グラントだったか?)の悲しみの方が身にしみた。
 ラストはちょっと予想外だった。せつない。
 おじいさんたちは一見、素朴な服装や生活で、ちょっと頑固なところも微笑ましかったりするのだけど、いざ感情が爆発したときの一途さは怖いほど。残りの人生を考えると、後先考えるより大切なこともあるのだろう。